雨の中、すべては一度きり





【偶然と必然】
(縮小版)

雨のふり始めは
ほこりの臭いがした

夜まで続いた雨は空気を澄ませ

ぬれたアスファルトが街をきれいに見せた


 


私は
カメラを首にかけ

うろついている


 


雨は
あちらこちらに水たまりをつくり

さまざまな波紋を見せてくれる





空から地面へ向かう雨粒の

一滴一滴の大きさ

スピード

その位置関係と着水の時間差は

千変万化の波紋をつくる


 


私はカメラをかまえ
ファインダーをのぞく

次々と表情を変える波紋に

いつシャッターを押せばいいのか
戸惑う


 


シャッターチャンスを感じ取ろうと

いったん深く息を吸い込み

呼吸をととのえていた





その時
雨はファインダーのなかで

まるで
仕組まれたかのような
均整のとれた幾何学模様をつくり

私をおどろかせた



無意味な偶然に満ちた波紋は

突如
意味のある必然にかわった





複雑で
乱れとしか捉えようのない現象の内に
均整のとれた理解しやすさで

自然は
その深奥な知性の尻尾の先を

チラリと
私に見せてくれたような気がした





偶 然 な ど な い の か も し れ な い

理解力の境界線が
偶然と必然を分けている





そんな直感にうたれた











私はその均整の瞬間を写すことができなかった
目に見えてからでは遅いのだ
見えてからシャッターを押しても次の瞬間しか写せない

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